2008-01-01から1年間の記事一覧

統合失調症は均一な一群ではない。

妄想幻覚などの陽性症状はうつ病、不安障害の重症例や発達障害などほぼすべての精神疾患で生じうる。木村敏は高機能発達障害と統合失調症の前段階は大きく類似すると答えた。診断基準はあくまで表に表れた結果を評価する。なぜ妄想に至ったか、素因は何があ…

アスペルガー症候群は

①情報の受け取り方の違い(感受性の違い) ②能力のアンバランス(できることとできないことの差が激しい) といった独特な個性があります。100人に1人の割合といわれています。集団での活動が苦手だったり、行動上の問題を起こしたり、わがままな子どもと思…

私たちは「わかりあえない」ということしか、最終的には分かり合えないのかもしれない。 ドナ ウイリアムズの「nobody nowhere」を読みながら思う。著者は広範性発達障害を抱えていて、かつ豊かな創造性を持ち合わせていた。だから「人とは違う自分の感性」…

基本症状と治療 

1.対人操作 なぜBPDの患者は人を操作してしまうのか。それはなぜ私たちが患者の作り出す渦に巻き込まれてしまうかという問いにつながる。人を惹きつける力がない患者では対人操作は起こりにくいという現実がある。対人操作の原理は逆転移なのである。彼…

家族教育

患者の語る生育史生活史はしばしば患者自身の幻想によって修飾されているので、治療者は知らぬ間に「患者の語る真実の話」に巻き込まれ、家族との関係を悪化させてしまうことに注意しなければならない。母親が手を離した隙に子供が飛び出して事故にあったと…

治療目標

BPDの患者は破壊的な行動を止めたり、激しい感情表出をおさえたりすることを求めているのではない。彼らの行動は「自分でもわからないけど、そうしてしまう」という激しい感情衝動に突き動かされた結果なのである。彼らの苦しみはこのような破壊的な抑う…

薬物療法

BPDでは抑うつ症状を伴うのが普通であり、症候学的レベルでは大うつ病と変わりない精神運動抑止、抑うつ気分が出現する。ただし、大うつ病のようには抗うつ剤が奏功せず、抗精神病薬や抗不安剤でも行動化をおさえることは困難である。 しかし、薬物療法は…

治療導入と治療契約

治療契約と治療同盟は一対のものであり、かつ破られやすいものである。むしろ両者は治療の前提ではなく、目標の1つなのである。それでもなぜこうした契約や同盟を結ぶ必要があるのかという理由は、逸脱行動や対人操作、激しい感情表出、不安定な対人関係、…

外来治療か入院治療か

BPDの治療は長期間にわたることが多いため原則として外来で行う。入院治療はいくつかの条件下では有用である。患者の行動化によって家族のシステムが破壊されているとき、行動化が著しく破壊的であるとき(たとえば自殺企図が頻発するなど)、家族を含め…

早期診断

BPDは深刻な行動化、対人操作、治療者の逆転移などによって治療構造が破壊されやすいので、できるだけ早期に診断することが重要である。以下の点に気がついたときには、BPDの可能性を検討する。(抑うつ症状は絶望、空虚感、孤立無援感、孤独感、憤怒…

境界例の治療はなぜ難しいのか

境界性パーソナリティ障害(以下BPD)の治療の困難さを説明するには、第1に受容的で支持的な精神療法に馴染まず、しばしば激しい治療者の逆転移やスタッフ間のスプリッティングを引き起こしがちであることをあげなければならない。BPDはそういう意味…

境界性パーソナリティ障害 (市橋秀夫の論文を改変)

はじめに 境界性パーソナリティを疑うならば、不用意に主訴に対する薬物療法を開始する前に、30〜45分程度の診断面接を数回行う。親や伴侶から情報を得る必要のある場合には、本人の承諾を得る。 診断面接で語られる情報が常に自己開示するものであると考え…

Personality障害

Cluster A 統合失調質(シゾイド) 喜怒哀楽に乏しく他人との交流が少ない(アスペルガーと関連) 統合失調型(シゾタイパル) 奇異な信念、奇妙な空想にふける。対人関係で過剰な不安 妄想性 不信感が強く疑い深い(前2者に比べストレスの影響を受けにく…

成田善弘「精神療法の失敗について」『季刊精神療法』1994年(『心と身体の精神療法』金剛出版、1996年、59-70頁所収)

・・・筆者も境界例の患者に自殺されたことはある。「自殺された」という言い方には治療者の被害観があらわれている。自殺は攻撃的意味をもつものである。 「死んでやる! 私が死んだら先生は一生後悔するだろう、後悔させてやる!」といわれたこともある。…

治療者のとるべき態度

成田善弘「青年期患者と接する治療者について」『青年期患者の入院治療』金剛出版、1991年(『心と身体の精神療法』金剛出版、1996年、71-97頁所収)「先生にお願いがあるんです。医者と患者としてでなく、人間と人間として私に接してほしい。病気の人間が本…

「困った時は正直に言う」「わからぬことは患者に聞く」

成田善弘「治療者の介入 −その2− 共感・解釈・自己開示」『精神療法家の仕事−面接と面接者』金剛出版、2003年、79-96ページ、より・・・レヴェンソンは、患者が怒っていて治療者も怒りを感じているときに、治療者の表現の仕方に以下の四通りがあるという。 …

行動化に対して

行動化といっても、こちらが勝手に名前をつけているだけで、患者のほうは、問題行動をしても、別に行動化だと思っていないわけです。 まず、これは行動化だと、問題に標識します。治療的に検討しなきゃいけないと。 ある行動、何かあるとすぐ怒ってしまうと…

構造化

さて、以上のような事態を防ぎ、患者治療者双方が傷つかないためにはどうしたらいいかという観点から対処の仕方=マネージメントを考えてみたいと思います。 自己破壊的な行動化や急速な退行を防ぎながら治療関係を維持するには、まず「構造化」が大切になり…

成田善弘/境界例の治療 

(平成6年7月12日第37回大阪精神科懇話会/北野病院紀要第39巻1994)を改変 「子どもの頃、母親が買い物に外出するともう帰ってこないんじゃないかと不安でした。母が『ただいま』と言って帰ってきても『本当のお母さん?』と何度も確かめました。誰か別の恐…

認知症について 

★中核症状 記憶障害 → 判断力の低下 → しだいに人格変化、寝たきりに 記銘力障害 新しいことを覚えられない。数分ごとに何度も同じことを繰り返す。全体記憶の障害 普通の物忘れ(体験の一部を忘れる)と違い、体験全体を忘れる。 外出した後に「どこも行っ…

江國香織 新潮文庫「つめたいよるに」所収 「晴れた空の下で」

わしらは最近、ごはんを食べるのに二時間もかかりよる。入れ歯のせいではない。食べることと生きることの区別がようつかんようになったのだ。 たとえばこうして婆さんが玉子焼きを作る。わしはそれを食べて、昔はよく花見に行ったことを思いだす。そういえば…

「ロックンロールとは生き様よ」と美輪明宏が吉井和哉に語っていた。

音楽性云々、演奏スキル云々ではなく、結局はその人の人間性や生き方が共感できるか。 そこで、その人の好きな音楽、好きな映画なんてものは決まってくる。統合失調症の本質は「その人の生きかたである」と京都大学名誉教授、精神病理学の第1人者である木村…

統合失調症 /アスペルガー症候群 /注意欠陥多動性障害

このへんが当てはまる科学者、芸術家って多いんだけど。 こういった疾患に共通する「見たものをそのままの形でしか覚えられない」障害とはつまり「見たものをそのままの形でまるごと記憶できる能力」でもある。 ジョンレノンの才能なんて、ある種の精神疾患…

例えば絵を描くとき。

どうしょうもなく表現したいことがあって わけがわからないうちに無意識に描きあげたものは 下手でもどことなく味がある。しかし味の出し方がわかった後にその味をシスティマティックに再現しようとすると、たしかに丁寧でよりキレイな絵になるけどなぜか前…

統合失調症親和性のひとは発症前から他者へと過剰に開かれすぎている(=知覚過敏、情報を取捨選択できない)

「自分に甲羅がない」と幼い頃から感じている。自己を他者の眼差しから遮蔽し、自己を包み込む(コンテイニングする)心的容器が脆弱。 慢性期患者は、その甲羅を病院なり、自分の家なり、または補助的自我となってくれる親なりに見出しているといえる。 統…

ひとが狂気に陥らず生き続けるには

「分裂と投影性同一視」に陥らないためには、世界に対する「基本的信頼」が必要。 基本的信頼とは「他者」、そして「未知」なる「現実」への信頼。それがなければこの世界はひどく脅威的なものに映る。 「基本的信頼」は乳幼児期の母なるものからの分離体験…

他人の欠点は自分の中にある欠点の反映。

写し鏡である他人の中に欠点を見つけるということは、その欠点の素地が自分の中にもあるということ。自分の欠点を隠すために他人の欠点に注目してしまうことなのかもしれない。人の目の中のゴミを指摘する前に自分の目の中のゴミをとるべき。失敗をすべて他…

天才的なアートが生まれる由来について

忘れもしない2001年『911』直後のRADIOHEAD来日公演初日。 トムヨークは「everything in its right place」の前に、R.E.M.の「It's the end of the world (I fell fine)」を歌った知ってのとおり 今日は世界の終わり でもいい気分さ 1.2.3. すべてはある…

以下はブックレビュー。

『もうホントこれ以上あたしに何か聞かないで下さい、人がそんなに大切だとはっきり感じたこともない、愛情なんてその感覚が実感としてない、あたしは子どものころから他人とうまく接する方法がわからないのだ。 あたしは何も考えていないのに「何を考えてい…