家族教育

 患者の語る生育史生活史はしばしば患者自身の幻想によって修飾されているので、治療者は知らぬ間に「患者の語る真実の話」に巻き込まれ、家族との関係を悪化させてしまうことに注意しなければならない。母親が手を離した隙に子供が飛び出して事故にあったときに、治療は第1に緊急施術であり、その後は機能訓練であろう。親が手を離したことを責めても、傷はもう元に戻らない。病因を母親や父親に求めるような犯人探しは早晩激しい家庭内暴力を呼び起こすか、家族が治療を妨害するような結果に終わるだろう。
 家族も十分に現在の子供の問題で苦しんでいる。むしろ必要なのは家族がどう対応したらよいかを具体的に指示し、どう病理を理解したらよいのかを教えることである。