アスペルガー症候群は

①情報の受け取り方の違い(感受性の違い)
②能力のアンバランス(できることとできないことの差が激しい)
といった独特な個性があります。

100人に1人の割合といわれています。集団での活動が苦手だったり、行動上の問題を起こしたり、わがままな子どもと思われ孤立する場合には、介入が必要になります。
自閉症に似ていますが、従来の障害児のイメージとはかけ離れています。自閉症アスペルガー症候群も、広範性発達障害PDD(pervasive development disorder)という概念の中に含まれます。

アスペルガー症候群の特徴をくわしく説明すると
①情報の受け取り方の違いとは、広範な選択的注意の障害(知覚過敏)があり、雑多な情報にさらされながら必要な情報を自動的に絞り込むことが困難。
→複数の情報を同時処理できない。一つの視点から別の視点へ切り替えるのが難しい
→他者の立場にたって考えることが難しい。次に起きることの予測が困難
→他者との交流をさけてしまう。自分独自の世界観、こだわりを持っていく
→全体より細部に注意が向く細部拘泥性、活動と興味の反復、強迫傾向を時に生じる。優れた機械的記憶を示したとえば円周率を全て暗記する子どもも存在する。これが②の特徴。

①②を理解した上でなら、次の特徴はより本質的に理解できます。

③社会性、コミュニケーション、想像力の障害、
・情緒的交流が困難、感情の急遽さあるいは平坦さ
・言語の抽象的意味理解、非言語的コミュニケーションが困難

複数の情報を同時処理することが難しいため、結果的に、相手の表情、ジェスチャーが読めない。実際にアスペルガー症候群の人は立体的な顔の表情を把握するのが、平面を把握するより難しいという研究結果があります。







情報の受信、発信。つまり人とのコミュニケーションにおいて普通の認知能力を持った人は(この世の大部分の人たちは)相手の言葉のうち、自分に都合がよい内容、それまでのその人の人生で規格化された内容のみ選択して受信します。そしてその内容から、さらに取捨選択、要約する。あるいは都合のいい嘘を混ぜ、発信します。こう書くと感じが悪いが、それこそ嘘も方言、本音と建前を使い分ける、大人の社会技能であり、だれもが当たり前に行っていることです。

アスペルガー症候群に近い特徴を持つ人々は、誰かが発した言葉、目の前にある情景。すべての内容をそのままの膨大なかたちで受信、処理しようとします。
したがって人との会話において、その内容を「骨格」となる内容と枝葉を十分区別、理解して受け止められたらよいが、木を見て森を見ずになることが多い。
特に今まで人間関係において失敗し続けてる人はネガティブな内容を全体の中で重視して受信しやすいかもしれない。
すると当然、情報の発信時にも誤った内容を相手に伝えてしまう。しかも膨大な情報を処理するのに追われて、嘘がつけず正直に言うか、苦し紛れのばればれの嘘となる。
だから好意をもって接していてもなぜか一方的なコミュニケーションとなるし、伝わらないことが多い。

そして膨大な情報を正直にそのまま受信処理するのだから、人よりやることが遅い、マイペースと言われる。膨大な情報を処理できる=研究者、学者、芸術家に向いている場合が多いです。そういう人種に限って、誰でも出来ることは、えてして出来ないのは、たとえば靴紐を結ぶのに、結ぶ返し方のポイント以外のすべてのどうでもいい視覚、触覚を情報として受け止めているからかもしれない。。
言い換えれば広範性発達障害とは「子供の、あかちゃんの感受性」を持ち続けること。この世界をありのままに見て感動する感性を持ち続けることです。
信じやすく「えー」「本当!」と目を丸くするからリアクションが変わってると言われる。
他の人は自分の偏見の枠組みがあるから情報をそのまま受け取ったりしない。嘘だらけの世の中をちゃんと疑ってかかっているわけです

【じゃあどうすればいいか?】逆に言えば、情報の少ない中で、あるいは子供の中で生き続ければ不便を感じないのかもしれません。つまり自分の周りの情報量をある程度制限して(構造化の手法と言います)単純かつ直線的(同時並行する仕事がない)な系の中で物事をこなすようにする。砕けていえば、学校や職場から与えられた枠組みで仕事をするのではなく、できればあなた自身にとって一番やりやすい方法で、十分な時間的余裕をもって、楽しんで物事にとりくむべきなんです。

アスペルガー症候群の独自の認知様式に対する治療的アプローチ】

①伝えたい内容を明確に具体的に。一度に多くの情報を伝えず一回の提案事項は一つで。静かに無表情に抑揚つけず話す(感情的にならないことが大切)
本人は言葉の機微を解しにくいため、医療スタッフや学校、関係者の間で本人に対する言語表現を統一する。独自の言語表現は、言葉と実際の状況や行動を対応付けて理解する。
情報過多によるパニックに対しては、興奮が鎮まるのを待ち、静かに声をかけて後片付けをする。その都度、具体的な対応を本人、周囲に指示する。

②親の認識を修正する。親と子の相互理解へ。
子どもがのびのび育つには親に余裕を持っていただく。親のこれまでの努力をたたえる。
親が障害を含めてありのままの子供を知り、理解する(障害受容)ように誘導。
 肯定的な自己イメージを育てる。失敗したときは、認めてあげて、自分で考えさせる。
 マイナス思考ではなく、あれができる、これもできるとほめられれば自信をもてる。

心理療法
認知行動療法
規則正しい生活 生活スケジュールをあまり大きく変化させない。
問題を少しずつ取り上げ、その時の感情と行動を明確にする。
適応行動を話し合い、結論は簡潔に書きとめ、本人がいつでも確認できるようにする。

箱庭療法
子どもを箱庭創りに誘導する。その様子のポジティブな感想を親に伝える。
子どもの創りかた、選び方を分析し、背後にあるものをたどる。分析結果を安易に本人に伝えてはいけない。本人が箱庭を創る過程で自ずから理解していく。箱庭はかれが想像し創造した小宇宙(インナースペース)である。
子どもの表面的な症状に対して対応するのではなく、こころを理解する。

診断や特徴にこだわらず、その子を全体として捉える。この世界にただ一人独自の個性である「かれ」としてみる。子どもは言語表現に乏しく、心の中の葛藤を身体症状として訴えたりするため、表情、しぐさ、姿勢、動き、話し方、情緒、感情の動きをこちらが体験し、共感に近づいてゆく。
今をよくみて、これまでをよく知り、これからを見ていく。判断を常に保留にする。大人であってもお互いを知り合うには長い時間がかかる。ましてや子供は発達途上でありこれから大きく成長していく。その障害に由来する行動特徴、その子独自の特性をとらえ、適切な対応をする。