天才的なアートが生まれる由来について

bookended2008-05-11



忘れもしない2001年『911』直後のRADIOHEAD来日公演初日。
トムヨークは「everything in its right place」の前に、R.E.M.の「It's the end of the world (I fell fine)」を歌った

知ってのとおり 今日は世界の終わり でもいい気分さ 
1.2.3. すべてはあるべきところに




ユングの心理学の立場からある程度説明できるかもしれません。かなり大胆に述べます。以後、難しい理論は簡略化するので一部不正確、あるいは箇条書きで説明不十分です。様々な医学文献より引用を多用しています。




医学上、統合失調症自閉症近縁とされる人々(偉大な科学者、芸術家に多い)はユングの解釈でいけば「他人と比べ無意識に従った行動をとりやすい人」といえます。
無意識とは、「夜に観る夢」や「偶然のできごと」、「自然の大きな流れ」などに例えられるかもしれません
その中には当然ですが、意識では許容しきれない内容や矛盾した思想、途方も無い発想までが含まれます。それはこの世を超越した何か(世界全体、空間、時空すべてを抜け最終的には原初の神々の領域)に通じているのです。
(余談ですが現代社会は意識≒自我を強大にして無意識≒自己(自然、宇宙そのもの)を圧倒することで進歩してきました、しかし行き詰った。今また再び無意識から生まれるものを見直すときに来ているのかもしれません)

無意識の内容に足を踏み入れてしまうこと、すなわち神々の領域に足を踏み入れることは、富士の樹海に迷い込むようなものです
下手すれば迷って出て来れなくなる危険をはらみます(この「無意識へ沈むこと」を心理学用語で「退行」といいます)

ユングによれば退行には「病的退行」と「創造的退行」があります。病的退行は幼児化につながり、無意識の中へ自我が拡散し、最終的には精神の完全な破綻に至ります。創造的退行は無意識の中から貴重な宝物を拾い出すことで精神の成長につながり、素晴らしい仕事(ビジネスにせよ芸術分野にせよ)つながります

たとえば革新的な音楽とはおおむね創造的退行の所産だと思います。
一番分かりやすい例はRADIOHEADではないでしょうか。1stから3rdまでの作品において、自我がなしとげられる最高水準の音楽を完成させKIDA/Amnesiacにおいて一度今までのフォーマットを完全に解体させる(つまり、この双子アルバムは「創造的退行」であり、来世≒涅槃への旅路と帰路となっている)。そして最新作にて新たな存在感を提示したのですから。

ここが一番重要なのですが、退行を創造的なものにするには強い意思の力、過去の経験の蓄積、何よりも周囲の人間関係のサポートが必要です。例えばトムヨークにとっての奥さんや子どもみたいな。ここは強調しすぎてしすぎることはない。