薬物療法

 BPDでは抑うつ症状を伴うのが普通であり、症候学的レベルでは大うつ病と変わりない精神運動抑止、抑うつ気分が出現する。ただし、大うつ病のようには抗うつ剤が奏功せず、抗精神病薬抗不安剤でも行動化をおさえることは困難である。
 しかし、薬物療法は一定の範囲内では有効である。患者に病理の概略を説明し、治療契約の話をしたあと薬物のことに触れ、「薬だけで治療することはできませんが、あなたの抑うつや危険な衝動を抑えてくれる効果はある程度あります。自分でその苦痛を耐えることができないと感じているなら、飲んでみませんか」と語りかけるとほとんどの患者は服薬に同意する。薬物は精神療法の状況の中で処方されるべきである。
 「ただし、薬はきちんと飲まなくてはなりません。どの薬も安全ではありますが、大量に飲んだりすると昏睡状態で嘔吐して死亡するような事故が起こることもあります。もし、きちんと薬を飲む力がないなら、処方はできなくなります。まだ自分を守ることができないということですから。決められたように飲むことを約束してくれますね」とこれも治療契約に含める。しかし、こうした決めごとは破られることが多いが大量服薬は行動化の一つという視点で対処すべきである。