境界例の治療はなぜ難しいのか

 境界性パーソナリティ障害(以下BPD)の治療の困難さを説明するには、第1に受容的で支持的な精神療法に馴染まず、しばしば激しい治療者の逆転移やスタッフ間のスプリッティングを引き起こしがちであることをあげなければならない。BPDはそういう意味で感染症のような特性を持つ精神障害である。
 第2に本障害は薬物療法が奏功せず、日常のムンテラ程度の外来精神療法では通用しないことである。この病理を理解するには精神分析的な基礎知識が求められる。
 第3に、治療のゴールがどこにあるのか、どのようにしたら健康になるのかという道筋が見えにくいこともある。